この地域はブナ林をはじめとする温帯性落葉広葉樹林が生育する山地帯ですが、冬季の豪雪と、比較的脆い性質の緑色凝灰岩(グリーンタフ)の地質的な特徴により、山体の斜面が削り取られて、基岩は露呈し、急峻で複雑な「雪食地形」と呼ばれる地形構造が卓越し、様々な立地環境(尾根、斜面、谷など)がモザイク状に形成されています。
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雪食地形とモザイク植生 |
山肌を削る雪崩 |
さらに、それぞれ立地環境の上に、それぞれに適応した植物群が生育し、「モザイク植生」と呼ばれる景観を形成しています。尾根には馬のたてがみのように並ぶキタゴヨウ、クロベの針葉樹林、雪崩の多い斜面にはミヤマナラ、マルバマンサクなどの低木林や草付き、斜面下部の安定立地にはブナ林、谷沿いにはトチノキ、サワグルミの渓畔林が成立しています。こうした植生構造は標高1,000m以下の山地帯では極めて珍しい上に、当地域ではほとんどが人手の加えられていない自然度の高い状態にあり、しかも50,000ha以上の広大な面積に存在しています。
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キタゴヨウ林
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低木林
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ブナ林 |
トチノキ・サワグルミ林 |
只見川と伊南川沿いには、ヤナギ類が優占する自然度の高い河畔林が連続的に見られます。この河畔林には希少樹種のユビソヤナギが生育し、当地域は日本最大の自生地の一部を形成しています。
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伊南川沿いに成立するヤナギ林 |
落葉広葉樹二次林には、かつての薪材生産を目的とした冬季の雪上伐採と台伐り位置からの萌芽幹を繰り返し利用することで形成されたあがりこ型樹形のコナラの巨木群が存在します。
コナラのあがりこ型樹形は全国的に珍しい上に、只見地域のような多雪地帯における雪上伐採と萌芽更新による薪炭林施業によって生み出されたものであり、この地域のかつての森林利用の一形態を示す歴史的な遺産と言うことができます。この他、地際からの萌芽による製炭材の生産と台伐り萌芽による薪材生産を同時に行った結果生まれた極めて珍しい複合型のあがりこのブナも見ることができます。
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コナラあがりこ林(黒沢) |
複合型のあがりこのブナ(蒲生) |
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